昨今の卓球の大会でも少しずつ入場制限が緩和されはじめ、ベンチにも入れるようになってきました。
今回はベンチに入った際の「タイムアウト」を取るタイミングについて私なりの考えを書きたいと思います。

1、選手によって取るべきタイミングは違う

まず私の中で大前提なのが「選手によってタイムアウトのタイミングは違う」ということです。

・連続失点しやすい選手
・流れにのったら手が付けれない選手(いい意味で)
・1本1本がとても慎重な選手
・その時のノリで突っ走る選手

などいろいろなタイプの選手がいます。
上記以外にも気合を全面に出す選手もいれば、ポーカーフェイスで声をあまり出さない選手、序盤はいつも緊張していつものプレーができない選手などいろいろなタイプがいます。
ベンチに入るにあたり性格やプレースタイル、あとは上記のような細かな点など、しっかり把握しておくことがスタートだと思っています。

またこれまでベンチに入る選手がどういう試合展開をして勝ってきたのか、負けてきたのかある程度過去のデータを把握しておくことも必要です。それらを考慮してアドバイスを送り、試合の流れを選手と一緒に作っていくことが試合で勝つ為に必須条件だと思っています。

2、得点・失点の仕方をしっかりチェックして、視覚に訴える

試合が始まってから、選手がどのような得点・失点の仕方をしているのかをしっかりチェックします。
プレーしている選手は興奮状態にあるので自分の試合を展開を全て覚えておくというのはとても難しいです。(普段の練習から覚えておく訓練はしなければいけませんが。)
その部分をベンチコーチが補ってあげる必要があります。
どういう展開が自分にとって有利に進んでいるのか、また対戦相手の心理状態はどうなのかなど「変化」を見落とさないようしなければいけません。

私が小学生・中学生のベンチに入る時に特に気を付けているのが「視覚に訴える」ことです。
セット間の1分間で声だけの意思の疎通では右から左に流れしまう可能性があります。
この頃のまだ若い選手は話を聞いていない、理解できていないと感じます。
それを防ぐためにも紙に伝えるべきポイントを書いて伝えます。その際に卓球台を書いて実際のボールの軌道などを書くとより理解度が増すと思います。

またタイムアウトが終わる前に選手本人に「アドバイスの内容を復唱」させてしっかり理解できているか確認しましょう。

伝えるべき内容を字におこして視覚に訴える

3、タイムアウトのタイミング

(1)序盤にとる場合の試合展開

まず、ベンチに入る選手より格上の相手と対戦する場合は基本的にはゲーム序盤で取るようにしています。
そもそも格上相手にセットを先行されると精神的に相手を追い詰めることは難しくなります。先行、先行で手を打っていき、少しでもリード、最低でも並走できることを目指します。
仮に1セット目の9-7リード、8-4リードなどとなった場合にはなんとしてもこのセットを取らなければ2セット目以降、有利に進めることはできないので早速タイムアウトの出番です。遅くとも2連続失点されたら取るべきだと思っています。

(2)中盤にとる場合の試合展開

実力が均衡している、もしくは体の硬さが取れず格下相手にいまいちリードできない時などセットカウントが1-1、スコアが6-6などの時は双方のやってくるプレーがおおよそ同じ展開になります。こういう場面で思い切ったプレー(まだ出していないSVやRV、カウンタープレーなど)ができるかどうかで流れを引き寄せられるか決まると感じています。
「1」でも書きましたが選手の性格的に思い切ったことが出来る選手もいればそうでない選手もいるのでこの場面では慎重派の選手の場合はタイムアウトを取って、やることを整理したいですね。

(3)終盤に取る場合の試合展開

「いつか大事な時のためにタイムアウトを取っておこう」という心理が働きなかなかタイムを取るタイミングを逃してしまい、最終的に終盤にとってしまうということがあります。残念ながら私もそういうことがあります。結果的に終盤に取ることはありますが初めから「取っておこう」と思って終盤になってしまうのはよくありません。
終盤で使う場合は戦術面のアドバイスというよりは

「これまでの自分の練習を振り返ってみよう。自分を信じろ」
「応援してくれている人がたくさんいるぞ」

など精神的なことのほうが大きいと思っています。
終盤になるとほとんどの場合試合展開は決まってきていて、お互い手を出し尽くしていることが多いです。
「驚きの一手」を炸裂させる時もありますがそういう場合ごくまれです。

試合展開が拮抗していて選手にもうひと踏ん張りしてほしい、最後の一押しというときは終盤で使ってみましょう。

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