早田選手が劉詩ブン選手に勝ちましたね。
昨年伊藤選手が世界選手権で勝ちましたが
やはり誰かが勝つと「私も勝てるのではないか」という
考えになり後に続くようになるんですね。

こんにちは。
八戸市出身の卓球指導者沼田です。→プロフィール

「技術と戦術3」ということで1回目から付随するお話の最終回とさせて頂きたいと思います。前回は「抽象的表現から具体的表現への変換」という内容でしたが最終回の今回は「徹底」というワードをテーマにお話をしたいと思います。
ある試合を参考に見ていきましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日の対戦相手は自分より格上のその名も八戸太郎君。(こちらは青森次郎君(右利き)とでもしておきましょう)
彼は右利きでチキータを得意としてバックハンドの打点の高さには定評がある選手です。ということで、今日の戦術はLsvを多く使う展開でいこうと決めて試合に臨みました。
案の定序盤はLsvがハマり相手もチキータで先手が上手く取れません。1セット目を取り、青森選手は2セット目以降もLsvを使い続けました。すると八戸君はLsvを回り込んで強打をするようになり、青森君のSVからの得点率が一気に減り2セット目を取られてしまいます。いよいよLsv戦法もバレてきたかと思い3セット目以降は通常の短いSVに戻すことにしました。それでもできるだけチキータをさせない為にフォア前にSVを集めました。しかし相手は大きく動きフォア前もチキータを多用し得意のラリー戦に持っていかれ短いSVからでも先手を取れず3セット目も取られしまいました。後のない4セット目でしたがどこにだしてもチキータをされてしまうのでSVを出すところが見いだせず結果1対3で敗れました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いかがでしたでしょうか。
この試合展開はけっこうあるパターンです。
特に自分よりも実力のある選手とやる時に多くなります。
ではひとつずつ細かく分析していきましょう。

1、立てた戦術は徹底的に行う!!

まず一番大きな敗戦のポイントは【Lsvを出し続けられなかった】ということです。この試合では2セット目以降Lsvを狙い打たれているのが分かります。回り込んで打つということはある程度SVが来る前からヤマを張っている証拠です。その回り込みにより青森君はLsvを出すのを躊躇してしまいます。ここでの修正ポイントはLsvが悪いのではなくLsvの回転、コースが悪いということです。一言でLsvと言っても様々な回転があります。
上回転、下回転、横回転・・・etc
相手としては「Lsvが来る」というヤマを張っているわけで「〇回転のLsvがバックに来る」というヤマではないということです。(もちろんゲーム終盤になってくれば話は違いますが。)
「Lsvが効かないからSsvにしよう」ではなく「〇回転のLsvが効かないから次は〇回転のLsvにしよう」という考えにならなければなりません。最優先すべき事はチキータを封じることなのです。
Lsvを中心に戦術を組み立ててる以上、Lsvに工夫をして戦術転換する必要がありました。読まれているというプレッシャーはかかりますがすぐに戦術を変えるのではなくアプローチの仕方を変えてやり続けるということが大切です。

2、ショートサーブの質をあげよう

それでもゲーム終盤になればLsvだけでは難しい展開になってくるでしょう。その時にSsvをどう配置するかが鍵になります。ここではチキータを避ける為にフォア前にだしています。これ自体は悪いことではありません。しかしフォア前も意外と範囲は広いものです。本人の中ではフォア前に出しているつもりなのかもしれませんがミドル寄りになっていたり、横回転の影響で相手の打球時にはミドルになっていたりする可能性があります。あなたのフォア前は本当にフォア前でしょうか。まずそこを確認しましょう。
昨今のフォアSVは自分のバックサイドから出すのが主流となっておりますがチキータ封じでフォア前に出す場合は自分のフォア側から出すとより効果的です。右対右の場合バックサイドの対角線上にお互いが構えています。その為コースが長いということと相手の打球位置が見えやすい位置にいるということでSVのコースを判断しやすくなります。これをフォア側から出すことにより相手にとっては自分が構えているストレート上からSVがくることになります。クロスよりコースが短い為Lsvの準備をする意識を高く持たなくていけません。それでいてフォア前はサイド際に来るのでチキータをするには大きく動く必要があります。
この2つの理由からフォア側から構えて出すSVがチキータを多用する選手には有効的なのです。

3、奇襲攻撃とリスクを背負った攻撃

自分より実力がある選手と戦うときは奇襲攻撃とリスクを背負った攻撃が必要不可欠になります。奇襲攻撃は対戦相手に「この相手は今までの相手と何か違うな」と思わせることが大事です。実力が上の選手からすれば何かを変えるわけでもなくいつも自分が行うSV・RVから試合を進めます。よって実力が下の選手は1セット目から仕掛けていかなかければいけません。この青森選手の試合では1セット目からLsvを使用して八戸選手に「ん?チキータさせないつもりか?」と思わせたということで第一段階の奇襲攻撃が成功したと言っていいでしょう。
次に必要となるのは「リスクを背負った攻撃」です。
この試合展開を見る限りでは八戸選手にチキータをされた時点で後手となっている状況に見えます。チキータからの展開は相手に取っては十八番なのでどうしても苦しい展開となります。ここでリスクを背負うポイントとしては「チキータを狙い打つ」ということです。チキータをされるというのを大前提に捉え、された後をどうするかに重点を置きます。この場合そのチキータを狙い打つことができれば相手側に対して第二の奇襲攻撃という意味合いで攻撃を仕掛けることもができます。何故かというと仮に狙い打ったボールがミスをしても「チキータが待たれている」という印象を与えれるからです。
しかし狙い打つといえミスばかりしていたのでは何のために戦術をたて実行しているのか、分からなくなってしまうので確実に得点を取りに行かなければいけません。そこで大切になるのが

1、チキータのコースを限定させること
、回転力のあるSVをだすこと

この2点です。
狙い撃ちをするためにはヤマを張る必要があります。
ヤマを張るというのは「だいたいこの辺にくるだろうと予測を立てる」ことです。ヤマを張りやすいようにここではBサイドギリギリ(台からでるかでないか)の位置に出しましょう。そうすると約7割は自分のBサイド半面ぐらいにきます。(果たして本当にそうかそれまでの展開で試しておく必要がありますが。)
そして項目の「2」にある回転力があるSVをだすとスピードがあるチキータというよりは下から持ち上げて回転をかけるチキータがくるはずです。チキータに回転がかかっているためスピードは比較的遅いので打球する準備ができます。しかし注意しなければいけないのがチキータに回転がある為、打つ直前にボールが沈んだり思っていた位置より自分の台のバウンド位置が浅かったりする場合があるので微調整が必要です。そこまで来たら後はミドルに打ち込みます。もちろん3球目だけで終わるわけではないので連続で打ち込んでいく必要がありますので次球に備え準備をしっかりしておきましょう。

このように特に格上の選手と対戦するときは安全策ばかりではなく思い切って攻めていくことも必要になるので得点に行く場面とミスしてもいいのでリスクを背負って攻める場面とを使い分けていきましょう。


【関連ブログ】
技術と戦術1 ~戦術とは~
技術と戦術2 ~具体的表現へ~

 

「勝ちにこだわる」をコンセプトに指導しております。→指導プラン
映像分析・講習会、コーチ依頼につきましてはこちらまでお問い合わせ下さい。