こんにちは。
八戸市出身の卓球指導者沼田です。→プロフィール

先日行われたアジアカップの決勝戦の馬龍対樊振東はとても素晴らしい試合でしたね。試合が進めば進むほど試合展開(戦術)が変っていき非常に見ごたえがありました。私の感想は次回のネタということで書き溜めておきたいと思います。

さて今回は前回からの「戦型別」の戦術について一つの戦型にフォーカスを当てて見ていきます。第1回目は「対フォアドライブ主戦型」です。
まずフォアドライブ主戦型の特徴をまとめてみましょう。

1、フットワークがあるため卓球台の3分の2はほとんどフォアで攻める
2、バックサイド回り込みを起点にする攻撃が多い
3、比較的短いSVが多い
4、フォア対フォアの引き合いには滅法強い
5、プレー領域は中陣から後陣

大きく分けてこの5つになります。

トップ選手の中で例を挙げると現世界チャンピオンの中国の馬龍選手、2015年世界卓球準優勝の方博選手、日本人の中だと木下グループ大島選手、同じく木下グループの水谷選手も入ると個人的には思っています。女子は大変少数派ですが現世界チャンピオンの丁寧選手、先日のTリーグのMVP日本生命の早田選手などが挙げられます。フォアドライブ主戦型と聞けばフォアの使用頻度が高い為バックハンドが弱いのではないかと思われるかもしれませんがそうではなく、フォアとバックの役割があり、あくまでバックハンドは決定打ではなくフォアハンドに繋げるための補助的な役割フォアは連打や決定打を打つ役割になっています。それでも今の時代は補助的なバックではなく質が上がって来ており、ぱっと見では分からないぐらいフォアとバックで遜色がありません。
フォアハンドはバックハンドよりもスイートスポットが広い為、通常繋ぐと判断されるボールでもフォア主戦型の選手はフットワークが良い為、決定打として狙っていくことができるので攻撃力が非常に高いのが特徴です。

これらの事を踏まえではどのように戦術を立てれば良いかを見ていきましょう。大きく分けて3つあります。

1、フォアサイドから攻めてからバック側を攻める

基本的にバックの使用頻度が低いからと言ってバックサイドから攻撃をしかけていくのはNGです。フォアハンド主戦の選手はバックサイドに来るボールを待っていて回り込んで強打しようと常に準備しています。
これらのことからフォアサイドから攻撃させた後にバックサイドに送り繋ぎのボールを打たせるというのが第一のセオリーです。バックで打つボールはミスはないものの強打は少ないのでそのボールを狙い打っていく為の戦術です。それに加え繋ぎのボールはクロスに来易い為そのボールを待つということも念頭においておく必要があります。
このように「繋ぎのボールを打たせる」で終わるのではなく「繋ぎのボールを打たせて次のボールを待って強打していく」という所まで掘り下げて考えていかなければいけません。

2、RVのメインはチキータ!!

次にRⅤについてです。
フォアハンド主戦の選手は少しでもフォアハンドで打つために来るボールに対して予測を立てて素早く動き出す能力がとても高いという特徴があります。その為ツッツキやストップのようにラケットの面が相手に見えるボールに対しては狙い打たれる可能性が非常に高いということを覚えておく必要があります。
そこでRVの組み立てで中心になるのがチキータです。チキータの特徴として同じフォームで全面に打てるということが挙げられます。ロンドンオリンピックチャンピオンの中国の張継科選手や中国若手No1の樊振東はチキータの名手として知られ相手が回り込んだ瞬間にコースを変えることができるくらい精度が高いです。
3球目側はRVのフォームから「チキータが来る」ということは判断できますがどのコースに飛んでくるかというのが分かりづらい為全面をフォアでカバーしたいフォア主戦型にとっては攻めにくいRVになります。
但し注意点としてチキータはストップのように台上に短く止めるのが難しく、長いボールになってしまうため、一辺倒になるとヤマを張って狙い打たれるということが挙げられます。ヤマを張られない、そしてチキータの効力を上げる為にもストップも混ぜて前後に揺さぶる必要があります。基本的にチキータのフォームが見えたら台から距離を取って長いボールを打つ体勢を取りますのでチキータのフォームからでもストップをできるように練習しておくことが大事です。

3-1、フォアストレートの徹底(右利き対右利き時)

フォアハンド主戦型はフォア対フォアの打ち合いが非常に強いです。逆に言えば打ち合いの展開になった場合、相手の土俵で戦うということになります。それだけは避けなければいけません。
対応策としてはフォアに送られたボールに対してはクロスに打つのではなくストレートのバック側に打つことです。そうすることにより相手はブロックの体勢に入りますので逆にこちら側が攻撃を仕掛ける起点を作れます。そして更に打点を高く攻めることができればチャンスボールが来る可能性が高まります。このように文章に起こせば簡単に見えますが実際にプレーとして行うには常にストレートへ打つ意識を持っていなければいけません。我々は咄嗟に来たボールに対しては無意識にクロスに打ってしまう習性があるので意識的にストレートへ打つ習慣をつけましょう。

コース取りがしっかりできれば相手は台から下がる可能性が高まりますが、フォア主戦の選手は基本的にプレー位置が中陣の為、下がっても引き返して逆襲することに長けていますので相手を下げても油断せず攻め続けることを徹底しましょう。

3-2、高い打点でクロスへバックドライブ(左利き対右利き時)

右対右が対角線上に相手が構えているのに対し左対右は同一方向の正面に構えています。

その為お互いバッククロス上(自分のバックから相手のフォアへのコースの事)が大きく開いているのでバックハンドをクロスに振りぬくことが非常に効果的になります。打つ側の心理としては右対右の対戦のように打つコース上に相手がいる場合より左対右のように相手がいない場合の方が振りぬきやすいものです。更にクロスボールは角度が出やすい為サイドを切って打つことができればこれ以上ないエースボールとなります。
私自身も左利きだったのでよく分かりますがバックハンドが上手い右利きの選手と対戦するとフォアに動かされる展開が多くなり非常に苦しい思いをしました。現代の高速卓球では大きく動かされるというのは命取りになります。

フォア主戦で攻める選手は回り込むことを常に念頭に置くのでバックサイドに寄る傾向があります。その為バッククロスへのボールは効果は絶大になります。バックハンドを安定して打つ為にラリーを続ける練習も大切ですが、試合でより効果を発揮するクロスへのバックハンドの決定打を多く練習することも取り入れましょう。


【関連ブログ】
「戦型別試合で使える戦術シリーズ」
入門編
対両ハンド型
対シェークハンド異質型
対カット主戦型
対ペンドライブ型
対ペン前陣速攻型(ペン表)


「勝ちこだわる」
をコンセプトに指導しております。→指導プラン
映像分析・講習会、コーチ依頼につきましてはこちらまでお問い合わせください