自己紹介社会人編も第9弾まで来ました。
今回は「沼田勝スーパーサブになる」をお届けします。

世代交代

これまで出番が少なかった後輩たちも少しずつ監督の期待に応えられるようになってきてチーム力も上がってきました。それに伴い私自身の出番も少なくなっていきました。チームも最年長の私の一つ下の年代となると足立・藤田(ともに早稲田大学出身)となり三つほど歳が離れていました。この辺りの年代から卓球界のプレースタイルはフォアハンド全盛の時代から両ハンド型に切り替わり、チキータの使用頻度も高まってきて技術的な変革期となっています。簡単に言うと私のプレーは古く、後輩たちは新時代のプレースタイルというような位置づけになります。
これは日鉄住金物流に限ったことではなく卓球界全体としてプレースタイルが変わってきている時でしたので対応力という観点から少しずつ後手後手になっているなという実感がありました。
いつの時代も世代交代というようなものはついて回りますが私自身も勝てなくなったり、練習の時にノータッチなどが増えたりして「そろそろ厳しいのかな」と思うことが多くなりました。

主将として自分のことよりもチームの事や後輩の事を考える機会が多くなっていったのと同時に「もう少しこうしたら良い展開になるのに」とか「サーブの出す位置が悪いな」などコーチ的な感覚も持ち始めていました。これは後輩のプレーを見る機会が増え、「もし自分があの技術を使えたらなこうするだろうな」というようなイメージができていたのだと思います。その時で既に30歳でした。

自分の現役が長くないことを自覚しながら限られた現役生活で何ができるだろうと常に考えていました。今更オールラウンダーのように総合的な強さを求めるのは効率的ではないと考え自分が今持っている武器、そしてその武器をちょっとだけ進化させてみるというようなことに取り組むようになりました。
テクニックと言えば聞こえはいいですが、今まで威力で勝負していたところをコースで勝負する。速さで勝負していたところを緩急で勝負するというようなイメージです。
それでも力が拮抗してゲームが終盤になってくるとおそらく「体力勝負になる」また「年齢的にも怪我をしてしまったらもう終わり」とも思っていたのでこれまでよりも体幹トレーニングやランニングの量も増やして体作りには時間をかけていました。

自分がすべきこと

大会前には主将として監督とオーダーの話し合いをいつも行っていました。その中で監督とよく議論したのが「得手不得手の問題」です。

卓球は様々なプレースタイルがあり多かれ少なかれ得意・不得意な戦型があります。不得意とまでいかなくてもなんとなくやりづらい相手というのは存在するはずです。
実力的にはA君が上なのにB君にはなかなか勝てないというのはよくある話です。団体戦はその部分をついてできるだけ相性の良い相手と対戦させたほうがよいということを良く話していました。

世代交代とは言っても最新型のプレースタイルに対して古いタイプのプレースタイルが効果を発揮するということがあります。トーナメントなど総合的な力を必要とする試合では最先端のプレースタイルが勝ち上がりやすいのは確かですがある程度対戦相手が絞られている団体戦では話は変わります。
監督との話でも「勝みたいな遅い卓球の方が相手は嫌がるかもな」(※私的には速い卓球をしているつもりでしたが・・・)「左利きに粘られたら弱いんじゃないか」などいろんな角度から相手を分析しました。
そうしていく中で自分が必要とされるポジションとやるべき仕事が見えてきました。

「ピンポイントで出されたところでしっかり勝ち星を挙げるために準備をする」

私はスーパーサブになる決心をしたのです。

スーパーサブになる

日鉄住金物流として年間の団体戦は

・前期日本リーグ
・全日本実業団選手権
・後期日本リーグ
・全日本選手権(団体の部)
・日本リーグプレーオフ ファイナル4

主に5試合あります。
大会ごとに試合方式は異なりますが大方4人1チームとして戦います。
そしてこの中で私が出場したのが実業団1試合、後期リーグ1試合、ファイナル4の1試合と合計で3試合になります。
良い試合をしても次の試合では使われることはなく完全にその試合の為だけの沼田でした。まさにスーパーサブ
そもそもスーパーサブの定義は何かを辞書で引いてみると


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スポーツの団体競技において、控え選手(サブメンバー)のうち、試合の流れに応じて戦略的に投入される、優れた能力を持った選手を意味する語。 「切り札」などと表現されることもある。(参照元:実用日本語表現辞典)
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とあります。(聞こえはいいですがあくまで控え選手・・・)

試合の結果は2勝1敗。
1敗はしてしまいましたが2勝はどちらも団体戦ラストの5番ということに加え、相手は格上。下馬評を覆す値千金の勝利となり日鉄住金物流創部以来初の
日本リーグ3位(6勝1敗の同率で3位)
日本リーグプレーオフファイナル4 3位

というおまけまでついてきました。

6勝1敗で3チームが並び惜しくも3位。しかし3位は創部以来初!!(参照元:卓球王国)

周りのチームからは
「勝。全然試合出てないのによくラストみたいなとこで試合できるな」
「久しぶりに出されて緊張しないのか?」
「沼田さん。実力ないのに奇跡起こしましたね」

・・・
・・・
というような皮肉ともとれるお褒めのお言葉を頂きました。

エース級の選手となると常に試合に出場しているので自分の調子の良い悪いを自覚しやすく、修正もしやすいですが一発勝負の野球でいう所の代打はその1打席、卓球であれば出された1試合に全てをかけて準備しなければいけません。私の場合は事前に自分の出番を告げられていたので逆に余計な雑念が入らず入念に準備ができたのが良かったのだと思います。

後期リーグ3位となり臨んだファイナル4。ラストで勝利してこちらも創部以来初の3位!!(参照元:卓球王国)

年齢の問題、後輩たちの台頭など自分の活躍する場としては以前より少なくなったのは否めませんが自分が活躍できるところを模索して全てをそこに賭けるというのは勝負の世界に限らず自分の活路を見出すためには必要なことだと感じた大会となりました。

次回の自己紹介社会人編第10弾は「現役最後のタイトル」をお届け致します。


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